遺伝的にお酒が弱い人

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遺伝的にお酒に弱い人が二日酔いを避けるにはどのような方法があるのでしょうか。

「お酒に弱い=二日酔いになりやすい」は本当か?

そもそも「お酒に弱い」とはどういうことでしょうか。
何を今更…とお思いでしょうが、これを間違えてしまうと正しい判断はできません。実は私達は複数の症状をひっくるめて「お酒に弱い」と呼んでいます。
まずひとつは「酔いやすい」
少量のお酒でもすぐに酔ってしまうことです。
そしてふたつめは「悪酔いや二日酔いを起こしやすい」
少量のお酒で頭痛や吐き気などを起こしやすいことです。
これらはそれぞれ別の酵素の能力により決まっています。

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このためキチンと分けて考えなければいけません。

アルコールの分解行程でまとめると以下のようになります。

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このように「酔い」と「頭痛・吐き気」は症状を引き起こしている仕組みが違うのです。

「お酒に弱い」を整理する

では次にお酒に強い・弱いをタイプ別に分類してみましょう。

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お気づきでしょうか?
②のアルコールの分解能力が高い人が「すぐに頭痛と吐き気を起こす人=お酒に弱い人」になっています。
逆に③のようにアルコールの分解能力が低くてもアセトアルデヒドの分解能力が高ければ、「酔いやすい人=お酒に弱い人」でも楽しいお酒が飲めるでしょう。

身近な人を思い浮かべるとそれぞれに当てはまる人がいませんか?

お酒を毎日飲んでいると強くなる?

「酒は毎日飲んでいると強くなる」という話をよく聞きます。
本当でしょうか?

実は当たっているとも外れているとも言えます。

アルコールを摂取すると肝臓では前述の通り2種類の酵素が分解を行います。
「アルコール脱水素酵素:ADH」と「ミクロゾームエタノール酸化酵素:MEOS」です。

MEOSは血液中のアルコール濃度が高くなった場合のみ活動します。
そしてこのMEOSは繰り返し活動させることでより活性化する性質を持っています。

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つまりある程度の量のお酒を毎日飲み続ければ、MEOSが活性化してアルコールの分解能力が高くなるということです。
これが「酒は鍛えると強くなる」という仕組みです。

 

でもちょっと待って下さい。
アルコール分解能力が上がると本当にお酒に強くなるのでしょうか?

先ほどの表に使って説明すると以下のようになります。

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このようにMEOSの能力が上昇すると少しだけ右側へシフトします。

MEOSを鍛えるとアルコールの分解能力が上がるため、同じ程度に酔った場合のアセトアルデヒドの量は増えていることになります。
すなわちMEOSを鍛えてお酒の量が飲めるようになると、悪酔いや二日酔いになりやすくなる場合もあるということです。

これが「鍛えるとお酒に強くなる」と言い切れない理由です。

実際に鍛えて強くなったと感じる人はもともとALDHの分解能力に余裕がある人でしょう。
それは表の「③酔いやすいが後に残らない人」に当てはまります。
ただしこの人は鍛える前から二日酔いにはなりにくいはずです。
鍛えると二日酔いになりにくくなると言うわけではありません。
また鍛えても一向に強くならないと感じる人は①か②に属するということになります。

なお、鍛えることでMEOSの分解能力は1.5~2倍に増えると言われていますが、残念ながら弱い人が劇的に強くなるということはありません。少し飲める量が増えるといった程度です。
さらに1~2週間断酒すると、MEOSの能力はもとに戻ってしまいます。

 

非常に残念な結果になってしまいましたが、どうやら二日酔いに関してはALDHの分解能力で決まってしまうようです。
次にALDHについて説明しましょう。

全ては遺伝で決まっている?

ALDHのアセトアルデヒド分解能力は大きな個人差があることが知られていますが、これは遺伝で親から受け継いだALDHの遺伝子によって決められています。

すなわち親が下戸同士の場合は、子どもも下戸になるということです。
酒豪の家系、下戸の家系というのはこうして出来上がります。

 

日本人が持つALDHのタイプを分類すると以下のようになります。

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中にはアセトアルデヒドを一切分解ができない「不活性型」と言われている人も存在します。この人はお酒を飲むとすぐに激しい頭痛や吐き気を催します。
この不活性型は25人に1人という割合で存在しますので、飲み会で1人2人いてもおかしくありません。「飲めない」という人に無理やり飲ませることだけは絶対にしないでください。
※不活性型は10%とする文献もあります。

まとめると

二日酔いになりやすいか否かは遺伝的に受け継いだALDHのタイプにより決まってしまう。
毎日飲んで鍛えてMEOSを活性化すると酔いにくくはなるが、結果的に二日酔いの原因とされるアセトアルデヒドを増やすことになる。
悪酔いや二日酔いを起こしやすい体質の人が毎日お酒を飲んで鍛えると二日酔いに関してはむしろ悪化する可能性が高い。

 

非常に残念な結果になってしまいましたが、弱い人専用の二日酔い対策というものは存在しません。
二日酔いは摂取するアルコールの量が増えると悪化するという基本的な性質があり、遺伝的にお酒の弱い人はその影響をより受け易いという事実からは抜け出すことができません。

非常に歯がゆい書き方になってしまいますが、最善の二日酔い対策は飲む量を減らすことという原則はここでも変わりません。

全く飲めない人は

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お酒を全く飲めない人は少し考え方を変えましょう。
「お酒が楽しい」と言われる理由は脳の理性を司る部位がアルコールで麻痺することで、抑えこんでいた本音や本性が開放されるからです。
お酒に楽しい成分(?)が入っているわけではないのです。

このため別にお酒に頼らなくても「言いたくても言えなかったこと」や「やりたかったこと」など理性が押さえ込んでいたものを意識的に開放すれば同じように楽しめます。それが許されるのが飲み会なのです。

 


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